根来久美子　選

(特選)

芝居はね現世の街のさみだるる

まありい

しろはえや羽もつものの旅支度

まありい

早苗田に風の足跡残しゆく

まつ子

梅雨空を少し揺らして鐘の音

知子

(並選)

谷戸までひと息老鶯のひと声

洋

父の忌の父に老鶯鳴き継げり

洋

小志まだ抱きて傘寿夏の雲

洋

激情の果の閑かさ花菖蒲

ちあき

五月雨や実験塔の灯りたる

ちあき

五月雨や水輪の中に鯉の口

ザザ虫

藍染の日傘の女を追ひ越せず

さむ

逝きてなほ残る人柄桐の花

榮

鈴木榮　選

(特選)

早苗田に風の足跡残しゆく

まつ子

新樹光日本語語る留学生

百合子

芝居はね現世の街のさみだるる

まありい

少年の掌灯す初螢

ちあき

(並選)

だあれにも会ひたくない日サングラス

弥生

額の花地震の瓦礫の中に咲く

弥生

山滴る吾も小さきひとしづく

弥生

献体せし姉の納骨五月雨

百合子

樟若葉リハビリ投手復帰せり

百合子

藍染の日傘の女を追ひ越せず

さむ

血に飢えた藪蚊部隊の統ぶる庭

さむ

五月雨やスクランブルは花畑

海村

五月雨に軋むスリッパ町の医者

知子

サングラス外して覗く乳母車

ザザ虫

吉迫まありい　選

(特選)

雨だれを残し五月雨引く気配

洋

小志まだ抱きて傘寿夏の雲

洋

いつの間に余生たまねぎ飴色に

久美子

(並選)

逝きてなほ残る人柄桐の花

榮

五月雨の白川郷のしづく音

榮

癒しさに鬼に鉄砲百合の花

榮

夏帽子バスのブザーを押したがり

久美子

一面の十字架五月雨のD‐デイ

久美子

常連の店で角打ち五月雨るる

ザザ虫

サングラス外して覗く乳母車

ザザ虫

五月雨や麻布は坂の多い街

弥生

山滴る吾も小さきひとしづく

弥生

五月雨やせめて地酒の飲み比べ

知子

青梅の存外硬き落つる音

海村

谷戸までひと息老鶯のひと声

洋

糖質0（ゼロ）夫に差し出す新茶かな

深雪

吊橋のすき間に見ゆる夏の川

まつ子

樟若葉リハビリ投手復帰せり

百合子

今日の一句（自薦）

一面の十字架五月雨のD‐デイ

久美子

（根来久美子 80文国）

番傘に何をささやく皐月雨

占爐

（鈴木顕一 62文哲）

五月雨の白川郷のしづく音

榮

（鈴木榮 64経経）

山滴る吾も小さきひとしづく

弥生

（岩渕純子 64外英）

さみだれて水平線を曖昧に

まつ子

（中岡昭子 67文教）

飛び石を囲み十薬茂り咲く

幸子

（稲田幸子 67文教）

水無月の一切れ厚くさみだるる

怜子

（和高怜子 67文新）

アダムイブ考えるひと五月雨るる

洋

（後藤洋 68理物）

いつの間に日傘の似合ふ女となり

海村

（畔柳文雄 68理物）

金目鯛赤いうろこに針のあと

東耀

（鄭東耀 69文史）

涼しげに中世写本の天使たち

さむ

（新山修 71経経）

芝居はね現世の街のさみだるる

まありい

（吉迫まありい 73国際）

競ふことなけれど競ひ花菖蒲

ちあき

（國司千晶 74文仏）

献体せし姉の納骨五月雨

百合子

（門倉百合子 75文独）

争ひの火種鎮めよ五月雨

深雪

（岩瀬深雪 78外独）

梅雨空を少し揺らして鐘の音

知子

（山田知子 79文国）

欠席投句

五月雨や水輪の中に鯉の口

ザザ虫

（小池拓夫 64法法）

いちにちがゆつくり里にさみだるる

純子

（梅本純子 82文仏）