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三水会 講演レポート#3(4月2日開催)

2024年06月10日

 三水会とは40年超、月例で活動を続けている講演・懇親会です。講師は様々な分野で活躍されているソフィアン。どこで、誰が、どんな活躍、取り組みをしているかをご紹介しネットワークを繋げていこうというのがミッションです。三水会での講演内容をレポートさせていただきます。

  

2024年4月2日(火)開催の三水会のレポートです。@ソフィアンズクラブ

 今回のゲストは石油エネルギー依存から脱却し自然エネルギー活用で持続可能な社会実現を目指していらっしゃるソフィアンをご紹介します。
 大陸間を石油を使わず無人帆船で物資を運ぶことができたらという夢を実現する!風の力で航行し、遠隔操作もできる船を開発しているのがエバーブルーテクノロジーズ株式会社CEOの野間恒毅さんです。

  

◇講演者ご紹介
野間 恒毅(のま つねたけ)様
(1993年上智大学大学院理工学研究科電気電子工学専攻博士前期課程修了)
エバーブルーテクノロジーズ株式会社代表取締役CEO
テーマ
「帆船ドローンが海を行き来する持続可能な社会を目指して」

    

◇野間 恒毅様 プロフィール
 栄光学園高等学校を卒業。1991年上智大学理工学部電気電子工学科卒、1993年大学院理工学研究科電気電子工学専攻博士前期課程修了。大学時代はA.I.、ファジイ理論、ニューラルネットワーク経路探索などの研究に携わる。卒業後ソニー株式会社に就職。
 ソニー株式会社在籍中の2000年8月から翌年9月にはNew York University Interactive Telecommunications Program, Tisch School of the Artsに留学しIoTを学ぶ。2004年、ソニーを退社後、様々なスタートアップに参画しCTOなどを務められ、現在もアプリ開発会社社長、モビリティ系メディア運営とご活躍されています。そして 2018年、エバーブルーテクノロジーズ株式会社を起業されました。

 
   

 「車の時代から帆船の時代へ 逆行でなくドローン化でイノベーションを起こす!」
風を推進力に使う国内唯一の帆船型ドローンを開発する野間さんが目指すヴィジョンです。

 始まりは2017年に観た大航海時代の帆船を取り上げた映像作品からアイデアを得て2018年に起業、船舶開発に乗り出す。2019年、全長1メートルの帆船型ドローンのPoCからスタート。2020年には2メートルでのPoCを、2021年には100kg超の積載可能な帆船ドローンへ。同時に救助を必要とする人のもとへ自動的に向かう「救命浮環ドローン」も開発。2022年には無人貨物タイプ帆船ドローンで19kmの連続自動航行実証実験に成功。2023年、帆船型ドローンの商品化、平行して「高機動型電動水上ドローン」を開発・商品化へ、という開発経緯で現在に至っています。そしてもう一つは「除雪ドローン」です。現在、PoCを経て、商品化が進行中です。

 ドローンというとプロペラのついた空飛ぶドローンを思い浮かべますが、今回のお話は水上ドローンです。空飛ぶドローンには積載量の制限と、飛べる時間が限定されるという弱点があります。飛べる時間は20から40分、翼を付けるタイプでも60分程度。水上ドローンは帆船型なら風さえあれば走り続けることができる、風がないときは太陽光発電と搭載の蓄電池でハイブリッド対応が可能になるという仕組みです。

 具体的には2022年、山形県で行われた国土交通省の離島地域の課題解決に取り組む「スマートアイランド推進実証調査業務」に参画。これは山形県酒田市の40キロ沖にある飛島に無人帆船で辿り着く計画でした。酒田港-飛島間は通常でも定期便の欠航が多い不安定な海域であるため安全重視での実証実験となりました。
使用した船は全長2.3メートル、重さ90kgのヨット。これを無人で風だけで自動帆走させる試みです。結果は1回目のトライアルでは40キロのうち6キロを2時間で無人帆走で航行し課題を抽出。時間をおいての2回目は天候が悪く、途中で引き返す航程で44キロ中19キロを9時間かけて無人自動帆送に成功。この間、ロープの操作、ラダー動作のための制御装置を動かす電力も極めて省電力で終えることができました。これもベースに100時間程度の連続航行が可能であり、太陽光などによる充電装置を搭載すればさらに長期間の航行が可能との手応えを得ることができたのです。

  

 こうした実績が物資の搬送だけでなく、水上の監視、救難時への対応等、応用研究の取り組みにつながっています。風がないとき、あるいは荒天時の救難などのニーズを想定して「高機動型」のドローンを開発し、商品化に至っています。空気室を作ることで、これが浮力を生み出し、沈まない。仮に波で転覆しても自然に元に戻る復元力を持つ特徴を備えています。また、水流ジェット方式でプロペラを使わないので救難者の安全も確保されているのです。この高機動ドローンはスマホアプリの設定で動かすことができ、航空ドローンのような研修等がなくてもスマホで誰でも使える商品です。

 あわせて陸上のドローンとして取り組んでいるのが「除雪ドローン」の開発です。除雪は雪国の生活上の大きな課題で冬期には多くの時間とコストをかけているのが現状です。一般家庭での大きな負担のみならず、企業では従来、残業時間を除雪に当ててきましたが、2024年以降は残業規制が厳しくなり対応に迫られているのです。そうした地元ニーズから北海道で実験に取りかかったところ、地元テレビ局のHBCや HTBが取材し、新聞社なども追随して大きな話題となりました。その後、企業や役所からも問い合わせが次々と寄せられました。
 雪が降り始めたら自動的に雪かきをスタートし「積もらせない除雪機」と言うコンセプトで開発しています。2024年冬には北海道限定でテスト販売し、2025年には量産化を計画しています。今後の課題は北海道の軽い雪は対応できるものの、東北などの重たい湿気を含み、凍って硬くなるような雪質にはさらなる実証実験が必要です。昨今の異常気象で降雪地帯はドカ雪が多発している中、今後更に大きなニーズがあると思っています。


 野間さんは最後に大学時代、理工学部電気電子工学科の加藤研究室、マルチメディア・ラボでの研究が現在の先進的なテクノロジーにつながっていると語って下さいました。また、ソニー時代のニューヨークで「9・11」を体験。このときのメディアのニュース報道のいい加減さからメディア不信に。(耳の痛いご指摘でした)ここからSNSで人々が情報を共有することの重要性に思い至り、SNSブログの会社への転職につながったとのこと。そこで出会ったのがラジコン。この流れがエバーブルーテクノロジーの立ち上げにつながっているとお話しいただきました。


◇脱カーボン、車はEV、発電はソーラー、再エネと様々な議論がありますが、野間さんの提唱・開発する帆船ドローンは究極のエネルギー課題のソリューションではないでしょうか?物流の課題も含めて課題解決を提唱する、この挑戦にエールを送ると共に今後の展開に注目し追いかけていきたいと思います。最新の情報はエバーブルーテクノロジーズ株式会社のホームページをご覧下さい。

以上
文責:黒水則顯(三水会幹事)

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