根来久美子　選

(特選)

空色の鋳物にゆだね今年米

まありい

曼殊沙華一揆の島の波しづか

陽花

名水の中で切り分け新豆腐

海村

間引き菜や住持と医師の禅問答

榮

(並選)

秋耕や断層帯に鍬を入れ

洋

新米のその一合の一炊を

洋

年年に短かき秋を惜しみけり

海村

松手入間合ひの長くなる鋏

海村

分け入れば獣の匂ひ草紅葉

ザザ虫

糠床にその色残す秋茄子

ザザ虫

僧侶等の音声わたる萩の叢

都代子

海見ゆる縄文の丘小鳥来る

陽花

十三夜エリックサティ聴きながら

ちあき

岩渕弥生　選

(特選)

どんぐりを握りて読みし「ぐりとぐら」

知子

芋の露まんまるな空閉ぢ込めり

ザザ虫

(並選)

田の神の御座す一粒今年米

ザザ虫

糠床にその色残す秋茄子

ザザ虫

水加減少し気にして今年米

まつ子

もう一杯ちりめんじやこで今年米

まつ子

新米のせり出してゐる店の棚

久美子

新米のひかりまるめて塩むすび

久美子

炊き上げの音も嬉しや今年米

海村

新米を眺め噛み締む南部杜氏

知子

今年米何と言つても塩むすび

さむ

新米の先づは湯気から讃へけり

洋

友に句集送る文書く十三夜

百合子

十三夜エリックサティ聴きながら

ちあき

新米の粒立つ会津わつぱ飯

陽花

畔柳海村　選

(特選)

篝火の鎮まり望の月天心

怜子

新米のひかりまるめて塩むすび

久美子

(並選)

衣かつぎ能登塩田の塩を振り

陽花

曼殊沙華一揆の島の波しづか

陽花

新米の粒立つ会津わつぱ飯

陽花

田の神の御座す一粒今年米

ザザ虫

糠床にその色残す秋茄子

ザザ虫

白菊の香の尖りたる通夜の家

久美子

書肆の肆が四とは知らざり秋深し

百合子

新米の届く棚田の写真添へ

ちあき

新米の届いて里の無事を知る

深雪

炊き上る香り輝き今年米

怜子

会員選最多句

新米を眺め噛み締む南部杜氏

知子

今日の一句

新米のひかりまるめて塩むすび

久美子

（根来久美子 80文国）

停電の家人を他所に虫すだく

榮

（鈴木栄 64経経）

田の神の御座す一粒今年米

ザザ虫

（小池拓夫 64法法）

お月さまついてくるよとダッシュの子

弥生

（岩渕純子 64外英）

さつまいも四、五日置くが佳しと言ひ

都代子

（坂井都代子 66文英）

新米の塩むすび喰ひ足るを知る

まつ子

（中岡昭子 67文教）

薪能鼓の響き色葉舞ひ

怜子

（和高怜子 67文新）

待ち兼ねし甲辰米ぞ塩むすび

洋

（後藤洋 68理物）

炊き上げの音も嬉しや今年米

海村

（畔柳文雄 68理物）

曼殊沙華一揆の島の波しづか

陽花

（野地陽子 69外英）

五合の新米拝む駐在員

さむ

（新山修 71経経）

空色の鋳物にゆだね今年米

まありい

（吉迫まありい 73国際）

十三夜エリックサティ聴きながら

ちあき

（國司千晶 74文仏）

友待ちて色なき風に吹かれをり

百合子

（門倉百合子 75文独）

新米でパエリアを炊くお馬鹿さん

深雪

（岩瀬深雪 78外独）

炊きたてを老に供へん今年米

香文

（田中香文 79文国）

（欠席投句）

家路急く闇に呑まるる秋夕焼

知子

（山田知子 79文国）