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講演会「経営者に聴くシリーズ」第3弾開催報告
ノバルティスホールディングジャパン鳥居正男社長の「グローバル人材の条件」

2019年11月06日

 2019年10月29日(月)上智大学と上智大学ソフィア会主催講演会「経営者に聴く」第3弾は、ソフィア会の副会長でもあるノバルティスホールディングジャパン社長鳥居正男さんです。「グローバル人材の条件」についてお話しいただきました。
 20人ほどの学生の参加を含め、200名近い方にお申し込みを頂き、講演会は70枚ものPPTを用いて、テンポよくスタートしました。
 鳥居さんは、48年間外資系医薬品業界一筋。そのうち26年間社長業を務めていらっしゃる、まさしくトップリーダー中のトップリーダーです。

世界第3位の製薬会社

 まずは、医薬品業界の全体像とノバルティスという会社について。ノバルティスは売上5兆7,090億円の世界第3位の製薬会社で、研究開発費に売上高の18%をかけ、社員は約13万人います。ノバルティスグループは、医療用医薬品やジェネリックなどを扱い2018年度の売上は約3,000億円、社員は約4,400人います。
 さて、今、医薬品産業には大きな変化の波がきています。日本は危機的な高齢化を迎えていて世界中がこの危機をどう乗り越えるのか注目しているということや、今までは治すことができなかった難病を、一回の投与で治すことができる薬ができてきたこと。そして、どのメーカーも、かなりの研究開発費をかけていることなどを説明されました。

グローバル人材が育ちにくい日本

 続いて、今回のテーマであるグローバル人材。
 グローバル人材というのは、グローバルな役割を担うことができ、グローバルに通用する力量があり、グローバルなマインドを持っていることである。ではなぜ、クローバル環境で活躍できる人材が日本から育たないのでしょうか。そこには、日本の正解主義、画一化、詰込み重視の教育、英語力が決定的に弱いといったことや、危機意識の欠如、内向きで世界的な視野がないといった原因があるのではないか。
 では実際にグローバル環境で活躍できる人材に求められているコアな資質というのは何かというと、コミュニケーション力や、違うものに違和感を持たずに受け入れる力がある。また他人への配慮・関心・興味を持ち、気持ちのゆとりやタフさがあることが重要だと語ります。
 異文化間でのコミュニケーションは難しく、日本人は「沈黙は金」ですが、グローバル環境では、話をしないと存在していないのと同じです。とにかく話すことが重要であり「雄弁は金なり」と言います。
 また、「あなたの奥さんは美人ですね」と言われたらどうするか。日本人だったら「いやいや、とんでもありませんよ」と答えるでしょう。でもアメリカ人だったら「だから、結婚したんですよ」と答えるというのです。たしかに、肯定する日本人は少ないかもしれません。

本社と絶対的な信頼関係を築くことが重要

 そしてエリン・メイヤーの書いた『異文化理解力』(日本語訳:田岡恵)という本をもとに、違いを明らかにしていきます。最終的に言えるのは、文化に優劣はなく、個人のコミュニケーション力を上げ、情緒ではなくロジックで語り、黙っていないでしゃべること。何かを聞かれたら考えこんだりしないで、とにかく何かを言う。そしてYes Noをはっきり言い、ゆっくり冷静に話し、わからなければ確認し、必要なら繰り返すことが重要だと語ります。
 そして、本社から日本は遠く、孤立していて、優先課題がはっきりせず、方向が見えない。グローバルプロジェクトから逃げたがると思われています。その本社とよい関係を築くにはどうしたらいいか。何といっても絶対的な信頼関係を構築し、実績を出し、上司のスタイルに合わせることだと、実際に鳥居さんがされているコミュニケーション方法を披露されました。
 鳥居さんが日頃心掛けているのは、社長の仕事は一生懸命に働いている社員に尽くすことであり、日々、感謝すること、気配りを忘れず、いつも謙虚にいようとされているということです。自分の人生は、上智大学に来て、フォーブス神父と出会いアメリカに留学したことから始まったと、いつも感謝の気持ちを忘れないと結ばれました。
 参加者は目を輝かせ、メモを取りながら真剣に話を聞き、会場からは我先にと質問がでました。知的刺激に満ち、さらに心を揺さぶられる真摯なお人柄に胸をうたれる講演会でした。


岩崎由美(講演会委員長)