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京セラ株式会社谷本社長
講演会レポート

2025年07月31日

2025年7月14日に開催された講演会「経営者に聴くシリーズ」は、京セラ社長の谷本秀夫さんにお越しいただきました。今回は、上智大学の学生向けプログラムSEN(ソフィア・アントレプレナーシップ・ネットワーク)との共同開催です。このプログラムは、社会人になっても常に「挑戦者」として考え行動することが大事だということを学生たちに知ってもらおうというもので、プログラムに参加希望の学生たちと共にお話を伺いました。

<苦労して達成したことの歓びはかえがたい>
テーマは、「稲盛和夫の経営哲学を継承し、次々と改革し続ける京セラ10代目社長」です。谷本秀夫さんは、上智大学理工学部化学科(現在の物質生命理工学科)を卒業し、満員電車で通勤するのは嫌だと、東京以外の会社を探している時に「京セラフィロソフィ」に出合い、共感して京都セラミック(現在の京セラ)に入社しました。当時は売上1500億円の会社でした。

最初に鹿児島・川内工場に配属され、その後30年近く各地の工場で勤務されます。30歳の時に「ファインセラミック」のプロジェクトリーダーを任されて、赤字の原因になっていたセラミック基板の製造ラインの改善を行い、生産効率を上げるために、30時間かかっていた焼き上げる工程を縮める、新しい製造ラインの開発に取り組みました。材料の配合を見直し、新しい炉をつくり、試行錯誤を続け2年ほど実験を繰り返し、3時間に大幅短縮できた。ところが、完成してから半年も注文がない時期が続き、すると今度は突然、作れないほどの大量注文がきて断らなくてはならなくなったりと、その時は本当に苦労しました。しかし、苦労して達成したことの歓びはかえがたいと、その想いを若い方々に味わってほしいとおっしゃいます。
ずっとエンジニアとして工場にいるつもりでしたが、2014年に当時の稲盛会長から個人携帯に電話があり京都本社に来るように言われます。3年後の2017年に社長に就任、当時1兆5000億円だった売上を組織改革などを行い5年で2兆円を達成、そして現在3兆円に向けて奮闘中です。

<京セラフィロソフィがイノベーションを導く>
「チャレンジ精神を取り戻すのが僕の仕事」とおっしゃる谷本社長は、ユーモアを交えながら、ご自身のこと、京セラのこと、そして京セラに脈打つ稲盛氏の経営哲学についてお話しくださいました。
「京セラフィロソフィがイノベーションを導く」と、京セラではこれまでも様々なイノベーションをおこしてきました。たとえば、創業時に単品生産から脱却できたのは「能力を未来進行形でとらえた」から。現在の能力で、できるできないを判断するのではなく、実現する強い意志をもっていました。
大きく飛躍するきっかけになった製品「セラミック多層パッケージ」は、それまで世の中に存在しないものでした。時代に先駆けた事業展開を可能にするために「開拓者であれ」。
人間の無限の可能性を追求する」で、事業の多角化を進め、切削工具、太陽電池、再結晶宝石、人工股関節に至るまでつくりだしています。 こうした京セラの持続的成長の原動力がフィロソフィです。谷本社長が一番好きな「謙虚にして奢らず」という言葉は、「現在は過去の努力の結果、将来は今後の努力で」ということであり、座右の銘にされています。
そしてすべての根幹にあるのが「人間として何が正しいのかで判断しなさい」という言葉だとおっしゃいます。
こうした稲盛氏の数々の言葉が書かれたフィロソフィブックは2冊に渡り、この理念を継承していくために社内では階層別フィロソフィ教育を行い、リーダーを育成するという仕組みができ上っています。

「人間として正しいと思った」ことを決断する
このほか、京セラの製品や会社概要、社会貢献活動、日本の半導体・半導体製造装置事情、今後の成長戦略、地球温暖化、環境保護に関するお話もいただきました。
常々、稲盛氏は会社が発展し続けるためには、チャレンジが必要だと言っていたそうです。「チャレンジして成功するのが一番いいけれど、何もしないよりチャレンジして失敗するほうがまし」だということですが、失敗した時に良好な人間関係がないと助けてもらえません。そのためにも、仲間を作るために会話をし、人間性を高める努力をしようと語られました。
最後に、SENの運営委員長で上智大学の特任教授、西口先生にもご登壇いただき、会場と共にトークセッションです。
「今、学生に戻ったら何をやりたいか」「社会に出るにあたっての心構え」「決断の決め手」「日本のものづくりについて」「どういう問題意識でオープンイノベーション活動をしているか」といった質問が次々に飛び出し、学生は瞳を輝かせて参加していました。谷本社長、お忙しい中、京都からお越しいただき心から感謝申し上げます。

事業企画委員会 岩崎由美(文国)