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上智大学&ソフィア会共催講演会
世界を駆けるソフィアンたち
「ストラディヴァリウスの秘密 ~生演奏と共に」

2023年08月01日

(株)日本ヴァイオリンの社長、中澤創太さんをお招きして開催された共催講演会「ストラディヴァリウスの秘密 ~生演奏と共に」。早々に満席となり、当日も猛暑の中たくさんの方にご参加いただきました。


遠くの観客まで届くストラディヴァリウスの音

まずお話しいただいたのはアントニオ・ストラディヴァリという人物について。彼の製作したヴァイオリンは当時からとても高価で特別な人しか手にできなかったこと。今現存しているのは、ヴァイオリン520、ヴィオラ12、チェロ53、ギター5挺で、しかもそのほとんどが博物館や音楽財団が保有しているため、購入できる可能性があるのはわずか40挺ほどしかないこと。1挺1挺に名前がついていて、来歴がはっきりしていて所有者がわかり物語がある。それぞれ個性と質が違うため、ひとつ弾けたからといって、他のも弾きこなせるわけではないそうです。まるでF1カーのように、楽器を自分のものにするのがまず難しいことなどを教えてくれました。


さらに、その音色の秘密に迫ります。まずは、年輪の詰まった小氷河期の木材が使ってあり、製作段階で300年以上熟成した木であるため板が強く、天才プレイヤーによって演奏され続けていることが今の音色を形作っているということでした。
ストラディヴァリウスの音の素晴らしさは誰もが知っていますが、残念なことに音楽家が購入できる価格ではないため、今は後援者が購入して無償で貸与されています。音楽家とのマッチングをするのも中澤さんのお仕事の一つです。


苦難の連続だったストラディヴァリウスの展覧会

2011年には、六本木ヒルズ森アーツセンターギャラリーで世界のストラディヴァリウス幻の名器21挺を集結させた展覧会を中澤さんは開催しました。
楽器は集められず、スポンサーに断られ、会場も借りられず、絶対無理だと言われ続けた企画してからの5年間でした。会いたい人に会ってもらうために張り込みをしたり、待ち伏せをしたりして何とか面会にこぎつけ、またSNSを駆使してPRをしました。絶望したこともあったそうですが、粘り、考え、忍耐強くモチベーションを保ち、チャンスをつかんで実現にこぎつけました。
展覧会では展示をするだけでなく、イタリアクレモナの工房の再現や、300年前の音を体験できるインスタレーション、ほぼすべてを演奏するレクチャーライブコンサートを開催して大成功し、7日間で約1万3000人が来場しました。
今では、世界中に支店を持つ㈱日本ヴァイオリンとして、世界の音楽関係者の信頼を集め、一目置かれる存在になっています。


聴き比べの正解率は約8割

生演奏は、神奈川フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターを務められていた日本を代表するヴァイオリニスト 崎谷 さきや 直人さんです。小品を2曲弾いていただいた後、ストラディヴァリウスとそうでないヴァイオリンとの聴き比べです。
今回使われたストラディヴァリウスは1732年製作の「レッドダイアモンド」。もう一挺は、世界最高の製作家イタリアのフランチェスコ・トトさんの2011年のもの。
さて、わかるでしょうか。参加者は目をつぶり、弾いてもらってどちらがストラディヴァリウスかを当てます。中澤さんが「自信のある方」と会場に問うと、「歴然としていますよ」と回答する方が現れ、さらに小学生の女の子も回答しました。中澤さんは、「こんなに自信をもって回答されるなんて、さすが母校」と驚きつつ、正解を教えてくれました。そして、手を挙げて回答されたお2人は、見事正解でした。


最後にアンコールの一曲エルガーの「愛の挨拶」に酔いしれて、お開きとなりました。夏の宵、贅沢で幸せな時間を過ごさせてもらいました。
中澤さん、崎谷さん、ありがとうございました。


事業企画委員会 岩崎由美