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「人、地域、地球とつながり、意義ある成長を」イベント

スターバックス コーヒー ジャパン
CEO水口貴文氏
上智大学&ソフィア会共催講演会
「人、地域、地球とつながり、意義ある成長を」

2023年02月20日

オンラインと対面合わせて約1100人の参加申し込みをいただき、1月31日、大盛況の中、「経営者に聴く」シリーズ第6弾、スターバックス コーヒー ジャパンのCEO水口貴文氏にご登壇いただきました。


<企業のミッションに共感して、働く>

お話しの中に出てきた、「地道に」「人」「つながり」「温かい」「地域に根付く」「誠実」「自分事にする」「共感」「心を豊かに」「一人一人に寄り添う」「コミュニケーション」「信頼」・・・という言葉が、強く心に残りました。それは、私が想像していた外資系企業のイメージとは違ったものでした。外資系というのは効率を重視し、グローバルに管理され、ドライな社風だと思いこんでいたのです。
スターバックスには接客マニュアルはなく、日本でのビジネスは、ほとんどが日本に委譲され、さらに店舗のアルバイトの採用は店長に権限が与えられています。普段、私たちがお店に行った時に感じる気持ちの良い笑顔や温かさは、企業のミッションに共感する一人ひとりの働く人たちの毎日の努力の積み重ねで生み出されていました。

「スターバックスのミッション"人々の心を豊かで活力あるものにするために― ひとりのお客様、一杯のコーヒ―、そしてひとつのコミュニティから"に共感しているパートナー(従業員)が多い会社だと思う」と、水口社長は語ります。
「ずっと、人が中心にいるブランドを作ってみたいと思っていたんです。利益と社会的価値の両立を目指している会社であるところも魅力でしたし、日本に元気と活力をもたらしたいと思って入りました」。その根底には創業者ハワード・シュルツの「企業リーダーとして私が求めるのは、常に利益と社会的良心を両立させようとする、優れた永続的な企業を築くことである。」という思いがありました。


<地道に信頼関係を築いて>

2022年9月末現在、スターバックス全国1771店舗には、正社員とアルバイト(3分の2が大学生)あわせて約4万8000人が働いています。会場にもスターバックスで働いている方や働いていた方が、かなりの数、いらっしゃいました。パートナー(従業員)と呼ばれる働くすべての人たちに対して、「会社が大切にしていることと個人が大切にしていることの接点を丁寧に話し合って目標設定をしている」と言います。会社と自分の目標のベクトルが同じであれば、自分事として取り組むことができ、力が沸き、前向きなエネルギーで顧客を笑顔にすることができるでしょう。
さらに、「日々、称賛・行動強化のためのフィードバックをすることをすごく地道にやっています。信頼関係を築いたうえで、きちんと人と向き合い、いいことも悪いことも伝えることを大切にしています。そうでないと、人は育ちません」。ミッションへの共感をベースに会社と個人が共に成長し、さらに地域のためになることを目指しています。


<20代の時の経験が、経営哲学に>

こうした水口社長の経営哲学は、ご実家である靴の製造卸の会社にいたときにできました。24歳で入社し資金繰りに苦しみ、製造が海外に移転される時代だったため毎月リストラをしなければならない状況でした。その時に学んだのは、利益を出さないと何もできないということ。また、どんなに素晴らしい技術を持っていても、1つの仕事しかできないとリストラの対象になってしまう。それは翻ると、会社がその人に成長の機会を与えなかったからではないか。会社は、会社を通して人が成長する機会を提供することが大切であり、それができない責任は会社にあると思ったそうです。そしてコストカットをするのではなく、付加価値をつける仕事をしていこうと、決めました。

ご自身が大切にしているリーダーシップについても教えてくれました。変化の時代は好奇心を持って行動すること。あきらめずに、やりぬくこと。その2つがあれば、新しい価値を作り、イノベーションすることができる。また、人のために何ができるか。働く仲間たちのために何ができるのかを考えるのが自分の最大の仕事だと言います。そして、ありのままの自分でいること。「できているかどうかわからない。でも、頑張っている」という言葉に、「たかさん」と呼ばれ、信頼され親しまれている、水口社長の謙虚さがあふれていました。

スターバックスには、「人と人とのあたたかいつながりをつくりたい」という目標があります。最後に映し出された映像には、上智大学の「For Others, With Others」の文字が浮かびました。この建学の精神「他者のために、他者とともに」こそが、私たちの生きる道なのだと確信しました。

文:講演会委員長 岩崎由美