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「地球を駆けるソフィアンたち」シリーズ・「音楽と共に生きる」トーク&ミニコンサート開催報告

2016年10月03日

9月12日(月)18:00より、上智大学2号館17階国際会議場にて、上智大学と上智大学ソフィア会の共催による、スペシャルイベントが開催されました。ゲストは、三村京子さん(外比卒)と懸田貴嗣さん(文独卒)です。
まずは早下隆士学長の挨拶から。学長はこの日イタリアから帰国し、このイベントに間に合ってよかった、まだイタリアの空気をまとっていますと話されました。続いて戸川宏一ソフィア会副会長から歓迎の挨拶があり、さっそくトーク開始です。

三村さんは、現在、友情の架け橋音楽国際親善協会理事長。この秋、日伊修好150周年記念オペラ「ジャパン・オルフェオ」を主催公演されます。日本とイタリアで推進する文化交流事業として、世界有数のアーティストとスタッフで日本とイタリアの伝統的歌劇文化の融合と挑戦をめざしています。
懸田さんは、バロックから古典派の音楽を中心に、日本とヨーロッパで活躍されているチェリストです。三村さんの「ジャパン・オルフェオ」管弦楽団のチェリストとして、イタリア側から指名されたのが懸田さんでした。ここに二人のソフィアンが音楽の舞台で出会ったのです。

●SEを経て芸大へ-懸田さん

まず、懸田さんがどうして音楽家になったのかについて、三村さんが質問します。
懸田さんは、小学生のころヴァイオリンを習い、中学の吹奏楽部で管楽器のユーフォニウム、高校のオーケストラ部でチェロと出会います。高校生のころ、バッハやモーツァルトが好きで、楽譜や文献を読むためにドイツ語を学びたいと考え、上智のドイツ文学科に入学。オケでチェロを弾いていました。
卒業後はふつうのサラリーマンとして就職、5年間SEとして働きましたが、一般社会の水が体に合わない、音楽をやりたいと思ったのが1998年でした。
会社を辞め、東京藝術大学音楽学部別科チェロ専攻修了、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程古楽専攻を修了。文化庁在外派遣研修員としてミラノ市立音楽院古楽科で学びました。
2004年に、イタリア・ボンポルティ国際古楽コンクール(審査委員長:グスタフ・レオンハルト)で、4人のトリオ・ソナタ・グループ「リクレアツィオン・ダルカディア」のメンバーとして、第1位と聴衆賞、及びORF(オーストリア国営放送)録音賞を受賞。本選の模様はイタリアとORFラジオで放送され、本格的な演奏活動が始まりました。
懸田さんが主に演奏するバロックの時代は1600年から1750年で、1600年は日本では関ヶ原の合戦の時代です。現在では古楽もインターネットで楽譜を探すことができますが、以前は現地で探したり、手書きの譜面をファクシミリで取り寄せたりしました。

♪ここで司会の岩崎由美さん(文国卒)が呼びかけ、三村さん自身について語っていただきました。

●カーネギーホールでの演奏を夢見て-三村さん

三村さんは、アメリカ東海岸で育ちました。幼いころからピアノを習い、コンクールでよい成績を収めると、ニューヨークのカーネギーホールで演奏できるのが楽しみで、練習を頑張りました。
帰国子女として、上智大学に入学。英語で授業を受けられるところが魅力でした。
上智の学生のころから、日本の心を世界に発信したいと考え、University of North Carolina at Chapel Hill, School of Journalism 修士 課程修了後、CNN ワシントンDC 支局制作部を経て、財団法人日本民藝館国際部に入り国際部主任。2008年にNPO 法人「友情の架け橋音楽国際親善協会」を設立しました。
2015年に初めてのオペラ「竹取物語」を製作、国の推進するアジア文化交流事業として、ベトナムの人たちと協働で上演しました。
この10月に公演する「ジャパン・オルフェオ」は世界最古のオペラであるモンテヴェルディの「オルフェオ」を基にしたオペラです。ギリシャ神話に材を取ったものですが、亡き妻を黄泉の国から取戻しに行く夫が「絶対に振り返ってはいけない」と言われながら、最終的に破ってしまうところが、古事記のイザナギイザナミの話と似ています。会場は、鎌倉鶴岡八幡宮と東京芸術劇場で、オペラの演奏家だけでなく、能楽、日本舞踊、古楽器、雅楽が協演して、幽玄の世界を表現します。
2017年にはイタリアから招聘がありますが、イタリアの経済状況を見極めて、契約するかどうかを考えます。

●バロックチェロの生演奏も

続いて、バロック楽器について、三村さんのスライドを見ながら、懸田さんが解説。ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュートなど、現在ではあまり演奏の機会のない楽器や、チェンバロやバロックヴァイオリンなどが描かれた絵画を中心に説明しました。
懸田さんはイタリアに2年ほど住んでいましたが、その間、ジェノバに古くて高くないバロックのチェロがあるという知らせがあり、ひやかしで見に行ったところ、一目惚れして購入、現在の愛器となっています。楽器はフランスのパリで作られたようで、内部のラベルに1755と書かれています。革命前の楽器ということになります。いまもフレスコ画のある王宮の一室で演奏することもあるそうです。

上智で学んでよかったことについて、懸田さんは、国際感覚が養われたことを挙げました。外国人に対する壁がないこと、また、ドイツにコンサートツアーが多かったのでドイツ語が役立ったことも、上智ならではのことでした。

♪最後に、待望の懸田さんによる演奏です。
ドメニコ・ガブリエッリ作曲 7つのリチェルカーレから7番
ジュゼッペ・マリア・ダッラーバコ作曲 11のカプリッチョから1番
そして、アンコールにJ.S.バッハ作曲 無伴奏チェロ組曲3番からアルマンド

バロックチェロは現在のチェロよりも小振りで、エンドピンがなく足ではさんで演奏します。弦はガットと呼ばれる羊の腸でできていて、現在のチェロに使うスチール弦よりも温度や湿度に左右されるため、コンサートホールではない会場の空調は楽器にとっては厳しい状況だと懸田さん。にも関わらず、魂の歌を響かせ、聴衆の心をぐっと掴みました。

♪当日は、音楽好きのソフィアンにとって嬉しいことに、特別なお客様がいらっしゃいました。三村さん製作の最初のオペラ「竹取物語」でヒロインかぐや姫を演じた、日本を代表するソプラノ歌手の幸田浩子さんが応援に駆けつけたのです。
イベントの最後に幸田さんが紹介されると、驚きと感激に満ちた拍手が湧きおこりました。髙祖敏明理事長も幸田さんの大ファンで、かつて幸田さんがMCを務めたNHK-FMの「気ままにクラシック」を欠かさず聴いていたとしばし談笑。幸田さんも「紀尾井ホールに行くときに上智の前を通っていましたので、きょうようやく中に入ることができました」とお喜びでした。
音楽を通してグローバルに活躍する異色ソフィアンおふたりのすばらしいステージを堪能した一夜でした。

鈴木真理子(広報副委員長、1982文仏)