8Sophians Now2025 年 7 月 14 日、「稲盛和夫の経営哲学を継承し、次々と改革し続ける京セラ 10 代目社長」というテーマで、京セラ社長の谷本秀夫さんの講演会を行いました。今回は、上智大学の学生向けプログラム SEN(ソフィア・アントレプレナーシップ・ネットワーク)との共同開催です。このプログラムは、社会人になっても常に「挑戦者」として考え行動することが大事だということを学生たちに知ってもらおうというもので、プログラムに参加希望の学生たちと共にお話を伺いました。苦労して達成したことの歓びはかえがたい谷本さんは、上智大学理工学部化学科を卒業後、京都セラミック(現在の京セラ)に入社。最初に鹿児島・川内工場に配属され、30 年近く各地の工場で勤務されます。30 歳の時に「ファインセラミック」のプロジェクトリーダーを任されて、赤字の原因になっていたセラミック基板の製造ラインの改善を行い、生産効率を上げるために新たな製造ラインの開発に取り組まれました。試行錯誤を続け 2 年ほど実験を繰り返し、作業時間を大幅短縮できたものの、注文がない時期が続いたり、逆に、作れないほどの大量注文がきたりと、大変苦労されたそうです。しかし、「苦労して達成したことの歓びはかえがたい」と、その想いを若い方々に味わってほしいとおっしゃいます。谷本さんは 2017 年に社長に就任され、当時 1 兆 5000億円だった売上を組織改革などを行い 5 年で 2 兆円を達成、そして現在 3 兆円に向けて奮闘中です。京セラフィロソフィがイノベーションを導く「チャレンジ精神を取り戻すのが僕の仕事」とおっしゃる谷本さんは、ご自身のこと、京セラのこと、そして京セラに脈打つ稲盛氏の経営哲学についてお話しくださいました。たとえば、「京セラフィロソフィがイノベーションを導く」というポリシーの下、これまでにも様々なイノベーションをおこしてき京セラですが、この会社が創業時に単品生産から脱却できたのは、現在の能力でできるできないを判断するのではなく、実現する強い意志をもっていたからだそうです。大きく飛躍するきっかけになった製品「セラミック多層パッケージ」は、それまで世の中に存在しないものでした。また、時代に先駆けた事業展開を可能にするためには「開拓者であれ」とも。京セラは「人間の無限の可能性を追求する」で、事業の多角化を進め、再結晶宝石、人工股関節に至るまで、様々な製品をつくりだしています。こうした持続的成長の原動力がフィロソフィです。谷本社長が一番好きな「謙虚にして奢らず」という言葉は、「現在は過去の努力の結果、将来は今後の努力で」ということであり、座右の銘にされています。そしてすべての根幹にあるのが「人間として何が正しいのかで判断しなさい」という言葉だとおっしゃいます。「人間として正しいと思った」ことを決断する稲盛氏は、「会社が発展し続けるためには、チャレンジが必要だ」と常々おっしゃっていたそうです。「チャレンジして成功するのが一番いいけれど、何もしないよりチャレンジして失敗するほうがましだ」ということですが、谷本さんは「失敗した時に良好な人間関係がないと助けてもらえません。そのためにも、仲間を作るために会話をし、人間性を高める努力をしよう」と語られました。このほか、京セラの製品や会社概要、社会貢献活動、日本の半導体・半導体製造装置事情、今後の成長戦略、地球温暖化、環境保護に関するお話もいただきました。そして最後に、SEN の運営委員長で上智大学の特任教授でもある西口先生とのトークセッションがあり、参加した学生たちからは「今、学生に戻ったら何をやりたいか」「社会に出るにあたっての心構え」「決断の決め手」「日本のものづくりについて」「どういう問題意識でオープンイノベーション活動をしているか」といった質問が次々に飛び出しました。お忙しい中、京都からお越しいただいた谷本社長に心から感謝申し上げます。▶ 事業企画委員会 岩崎由美(文国)京セラ株式会社谷本社長 講演会レポート
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