SOPHIANS NOW No.178 Autumn 2015
14/16

Sophians Now14研究と教育の両立を目指す― 研究所が設立されました。具体的にどのような活動をお考えでしょうか。藤崎 まず、アジア太平洋のガバナンスについて研究活動を行います。同時に、講演会やワークショップなどを行い、上智大学のさまざまな研究成果を発信していく。3番目の柱として、この場所でラウンドテーブルを行います。通常の講演会はどうしても一方通行になりやすいので、参加者同士で、場合によっては英語でもディスカッションをしていきたいと思っています。― 樋渡先生は所長として、どのような研究所を目指されますか樋渡 この研究所の話をいただいたとき、既存の研究所とは違うものをと考えました。特に学部学生にとって研究所は敷居が高いというイメージがありますが、そうではなく、研究は教育と並んで非常に大きな柱ですから、まずそれを実践したい。髙祖理事長からも、研究と教育を両立させるのが上智大学だといわれましたし、教鞭をとるものとしてもその2つが結びつかないとおかしいと考えています。 アクティブ・ラーニングという言葉がありますが、一方的に授業を受けるのではなく、授業の外でも自分なりに勉強してもらうための仕組みが必要だろうと考えています。ですから、新しいタイプの教育の一環としてこの研究所を大いに活用すると、それを私は特に強調したいですね。そのような成果を出していけたらいいなと思っています。卒業生とも交流できる場を― この研究所があるのは上智が買い取った以前福田家があったビルの1階ですね。ガラス張りで、外を通る人からも見えるユニークな研究所です。藤崎 そうですね。研究所ですが本を並べたてたりしないで、ここでは白い壁と大きなテレビ画面とでみんなで楽しく議論できる場を作ろうと考えました。気軽に立ち寄れる場所にしたいと考えているわけです。 つまり、インキュベーターを目指しているわけです。研究所も具体的な訓練の場なんですよね。ところが、大人数の講演会に参加し、勇気を振り絞って一回手をあげて発言しても、答えをもらってそれでおしまい。しかしこのような場所だったら、「先生が言っていることは違うと思います」ということも切り返せる。必要なのは聞いてそれで終わりというのではなく、質問をし討議できる能力です。そのようなインキュベーターになれないかと思っているわけです。ですからラウンドテーブルには、卒業生にも来ていただけるようにと考えています。樋渡 ソフィア会にはASFという大きなイベントがありますね。そこに多くの卒業生がいらっしゃいますので、そこで議論をする場を設けるとか。また、卒業生は昼間仕事をしていますので、夕刻から最近の国際情勢などについて話す場を設けることも考えています。そして、そのとき学生がいれば卒業生との交流が生まれます。学生が卒業生ともつながり、卒業生もここに来ればいろいろな人に会える、そういう場にしていきたいと思っています。グローバル化の2つの要素― 上智でも総合グローバル学部が設立され、グローバル人材育成の重要性が指摘されています。具体的にどのような取り組みが必要ですか。樋渡 私は地域懇談会で学生の保護者と話すことがあるのですが、そのとき「総合グローバル学部ではどのような学生を育てたいと考えているのですか」という質問を受けることがあります。それに対し「グローバルというけど、場所は問題ではない。日本にいてもグローバルな視野は持てます」というと、結構安心される方が多いのです。留学をしなければいけないとか、今の流行のグローバルなトレンドにこだわる人がいるわけですが、日本にもいろいろな人が来ているし、上智のキャンパスにも留学生が大勢います。その人たちときちんとコミュニケーションできて、意見やバックグランドの違いがあってもスムーズに話ができる、そういう人を育てたいと思っています。 グローバルというのは別に海外に行くことではなく、日本を基点にして、日本の安全をどのように考えるかとか日本の経済をどう立て直すのか、自分の学んできたことを日本を基盤に、また上智を基盤にしっかり考えることだと思っています。つまり、グローバルは当たり前すぎて、そんな言葉を使っても意味ないとさえ思っています。藤崎 ツールである外国語を話す能力と、そのうえで必要な情報を発信する能力。その両方が必要なんですよ。中身があって、それを発信するコミュニケーション手段ももっているということです。相手のいうことを理解でき、渡り合いながら、自分の意見を発信していく。そうなるためには長い時間がかかると思いますが、そのような種を苗床に植えていくということは必要だと思っています。― もちろんその中で、安全保障の問題も重要ですね。藤崎 南沙諸島の問題や最近の集団的自衛権の問題など、それぞれ立場は違うかもしれませんが議論はできますよね。難しい問題だからノータッチということではないと思います。一方的な主張をするということではなく、議論は大切ですね。― ありがとうございました。上智大学は去る7月、新たな研究機関として「国際関係研究所」を設立。総括代表に前駐米大使の藤崎一郎特別招聘教授が、そして所長に総合グローバル学部の樋渡由美教授が就任しました。国際政治学と安全保障に係る研究を軸に学内・学外の研究機関とも連携、グローバル化の進展でめまぐるしく変化する国際情勢にいかに対応するかが研究テーマ。学生を対象とした教育活動にも力を入れていくという二人のリーダーに、特にグローバル化の意義などについてお聞きしました。Go Global Sophians!上智大学に誕生した国際政治と安全保障の研究拠点      ̶「国際関係研究所」設立の背景を聞く総括代表  藤崎一郎特別招聘教授所  長  樋渡由美総合グローバル学部教授

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です