SOPHIANS NOW No.177 Spring 2015
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No.177/Spring /2015グローバル化とは 今いろいろな分野でグローバルということが言われていますが、グローバルの本家はカトリックだと思います。1549年にフランシスコ・ザビエルが来日したのですが、知的水準がとても高いということで日本には学校を作る必要があるとローマに報告しました。そして約360年後、上智大学が作られた。カトリック自体、とてもグローバルだといえるでしょう。 経済のグローバル化、移民のグローバル化、これらには十分な用心が必要です。外からの移民の流入によって国内に住んでいる人達の水準が下がってしまうことが多々起きています。アフリカは、グローバル化によって独立が相次ぎ、その後、国内外の対立で殺戮が続いています。注意深くゆっくりと進めていくことが求められます。神様とケンカしてはいけない 日本ではカミサマはGODではない。イザナギ・イザナミの天地創造から神話で成り立っている国です。日本のカミは基本的に日本人の先祖なので、八百万の神を祀るのもよいとする国なのです。これは日本が島国ということもありますが、そういう恵まれた環境にあったわけです。 神道から始まりながら、インドで生まれた大乗仏教を受け入れ、弘法大師が誕生したり天皇が東大寺を作られたりしています。今でも仏教関係の大学が10校以上あります。キリスト教も受け入れた。こんな国は他にはありません。宗教戦争もない。フランスで革命後、政教分離が徹底されたときでも、靖国神社の隣にフランス系修道会の学校が二つも建てられています。日本ほどグローバルな国はないわけです。 例えばアメリカは移民文化の国ですが、それによって元々住んでいる人達、インディアンなどの先住民は絶滅の危機に追いやられました。オーストラリアのアボリジニ、南アメリカのインディオなどもそうです。これはグローバル化の持つ危険性です。日本人は日本列島の原住民なのです。大学のグローバル化について 大学のグローバル化や学生の国際交流では、違った国が違った文化を持っていることを学び、それを日本文化を良くすることにつなげて欲しい。仏教の伝来によって日本の文化は豊かになりました。明治以降の西洋文化は日本の文明を高めました。グローバル化によって自国の文化・文明を発展させること、これが本来の意味であると思います。同じ文化にするということではありません。先生の母校でもある上智大学に望むことは何でしょうか 私は昭和24年に上智大学に入学しました。山形県鶴岡市の出身で、高校の進路指導の先生が東京の大学を視察に行って、上智だけが卑しくないと勧めたので進学したんです。卒業してからドイツ、イギリスの留学を経て、上智の助手になり、それからずっと上智で教えました。 私が留学した当時、ミュンヘン大学は学生数約1万人、ミュンスター大学は約4000人でした。今、ミュンスターは学生数が4万人です。日本とアメリカの影響で大学の数が増えました。近代化にあわせて教育の水平化も進んでいます。 以前は上智に有名になって大きくなってほしいと願っていましたが、今はあまり大きくなってほしくないなあというのが率直な感想です。 私が学生の頃の数年前は、学長室で卒業式がありました。今のように受験秀才の集まりではない。でも当時の少数の学生には三菱商事社長の諸橋さんやJALの社長になった人もいた。先輩もあまりいなかった。だから私は、デカルトがイエズス会の学校で学んでいるので、先輩だと考えることにしていました。先生と学生との絆 何より先生と学生とのつながりが素晴らしかった。元学長の土橋八千太先生はパリで数学と天文学を学び、上海の天文台の副所長を務め、上智では数学を教えていました。「ガリレオの主張は間違っている」というのが先生の主張でした。私は一人で先生にお目にかかり話を伺って、私も天動説でもかまわないと思います。ボッシュ先生、ロゲンドルフ先生、ロゲン先生などは本当に素晴らしい先生達で、いつも知的ひらめきを与えてくれる存在でした。 私が大学で教えていた頃も、まず先生同士のつながりが密でした。そして学生と先生とのつながりはもっと強かった。学生は先生の家によく遊びに行きました。先生も断らない。奥様方は大変だったかもしれないけれど、そういう家族ぐるみのお付き合いがあったものです。大学紛争の頃は、私もよく新宿の喫茶店でゼミを行ったことがありました。学校の近くにマンションを借りて学生に提供した期間もあります。学生にとって必要なのは「たまり場」なんです。 5月に、よく寄稿する雑誌「WiLL」を作っている出版社WACが雑誌発行の10周年を迎えるのを機に私の半自叙伝の記念出版をしてくれるそうですが、そこには私の学生時代に受けた授業の内容や思い出などを綴っています。「グローバル化」ということについて 先生のお考えをお聞かせくださいベストセラー「知的生活の方法」が上梓されてから40年。著者である渡部昇一上智大学名誉教授も85歳を迎えられました。しかしそのパワーと熱い思いは変わることはありません。昨年、上智大学が文部科学省のスーパーグローバル大学(牽引型)に採択され、改めてグローバルという言葉が注目されていますが、これについて「グローバルの本家はカトリック」、「日本ほどグローバルな国はない」と指摘。英語学を中心とした古書の蒐集家としても知られている先生ですが、ご自宅のその書籍に囲まれた圧倒的な知的生活空間でお話を聞きました。Go Global Sophians!上智大学名誉教授 渡部昇一先生インタビュー

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