「ゆる婚」の参加者アンケートに見るイベントの実情

上智大学ASF

「ゆる婚」の参加者アンケートに見るイベントの実情

ASF2019実行委員会 広報チーム

文責:上智 太郎

1.背景・問題意識

 毎年5月の最終週に行われる上智大学のホームカミングデイ、「All Sophians’ Festival(ASF)」においては、例年卒業生を対象とした婚活パーティー「ゆる婚」が開催されている。今年で8回目を迎える当イベントは、社会人になったことで出会いの場が減ってしまったソフィアンたちが一堂に会し、大学時代のオープンなキャンパスライフに思いを巡らせながらパートナー探しを行うという実にホームカミングデイらしい企画で、近年ではASFの押しも押されもせぬ目玉イベントとして、実行委員ですらも仕事をほっぽりなげて本気も本気の参戦を決意するほどの名物行事として知られるようになった。

 しかしながら、参加者の募集段階で問題となるのが、毎年ほぼすぐに募集が締め切られる女性に対し、男性の応募数が漏れなく伸び悩むことである。一般の婚活パーティーでも男性不足・女性余りが嘆かれる昨今ではあるが、他のパーティーとは違い、「ゆる婚」は参加費が男女同額(しかもたったの1000円)で、年齢制限も一切ない。にもかかわらず、毎年女性の参加枠の方が圧倒的に早く埋まるのは、些か不可解なことだ。原因はいくつか考えられるが、何にも増して考慮すべきは、彼ら全員が上智大学出身の男性であるという点だ。世間一般でも男性の草食化が指摘される昨今、大学時代から基本的に女性の方が多い環境で過ごしてきた上智大学の男性にとっては、いくら「ゆる」、またいくらソフィアン同士と言えど、「婚活パーティー」というおどろおどろしい響きが参加に二の足を踏む大きな要因になっているのではないだろうか。仮にこれが事実だとすれば、「ゆる婚」はまさにそういった人たちに出会いの場を提供することを主目的としたイベントであるにもかかわらず、その層をみすみすと取り逃してしまっている可能性が高い。

 この状況にメスを入れるためには、まずベールに包まれた「ゆる婚」というイベントがどういったものであるかを解き明かし、参加を検討している人の不安を少しでも取り除く必要がある。「ゆる婚」の発展なくして、近年の晩婚化や少子化問題の解決を図ることはまさに笑止千万の暴挙であり、ASF広報の任を畏れ多くも仰せつかった我々には、この問題を解決するために最大限の努力を行う責任があることは、改めてここで指摘するまでもない。そこでその第一歩として、昨年度の参加者のアンケートを解析し、「ゆる婚」の実情に迫ることを試みる。

2.先行研究

 「ゆる婚」について扱った先行研究は、筆者が調査した限りでは、これまでに存在しなかった。考えてみれば、それは当たり前のことである。

3.調査結果

 調査結果は、昨年度の参加者の中からアンケートに答えていただいた149名(男性66名、女性82名、未回答1名)の回答データに基づく。なお項目によっては、一部未回答のデータがある項目も存在する。

 まずは卒業年別データ(図1)を参照する。上は1988年卒業から、下は2017年(開催の前年)卒業まで、実に幅広い年齢層を持つイベントであることが読み取れる。参加者のマジョリティとなっているのは20代だが、それ以外の年齢層にも比較的遍く散らばっており、年齢を理由に参加を敬遠する必要はなさそうだ。

図1.卒業年別データ

出典:(本当の)アンケートデータより筆者作成


 次に、企画について見ていく。2018年の「ゆる婚」では、『ぐるぐる自己紹介』、『クイズ大会』、『フリートーク』の3つの企画が行われた。図2では、『ぐるぐる自己紹介』の時間配分について聞いた結果を示している。「短い」と「かなり短い」を合わせると、「適切」の3倍近い数字になり、昨年の参加者が不満を抱いていたことは明白だ。しかしながら、この反省を踏まえ、今年の「ゆる婚」では開催時間を30分延長し、お互いのことを知りあうための時間を増やすことになった。気休め程度の追加時間ではあるが、「ゆる婚」は日進月歩の成長を遂げていると言えるだろう。

図2.自己紹介の時間

出典:(本当の)アンケートデータより筆者作成

 そして、スタッフの対応に対する感想をまとめたのが図3だ。アンケートを提出する先が当の学生スタッフという事情は考慮されようが、ほとんどが好意的な回答で占められており、結果如何にかかわらず運営側の対応には一定の評価が集まっていると見て良さそうだ。学生スタッフはほぼ全員がソフィア祭実行委員会のメンバーで、大人数を捌くのはお手のものである。

図3.スタッフの対応

出典:(本当の)アンケートデータより筆者作成

 これらの結果をサムズアップするものとして、図4と図5に示した満足度のデータがある。図では一応分けているが、回答の分布は男女ともにさほど変わらず、少なくとも物足りないと感じて帰路に就いた人はほとんどいなかったと思われる。「とても満足」もそれほどいないことは今後の課題として挙げられるものの、この点に関しては「まだ伸びしろを残している」という好意的な見方をしたい。

図4.男性(66人)の満足度

出典:(本当の)アンケートデータより筆者作成

図5.女性(82人)の満足度

出典:(本当の)アンケートデータより筆者作成

 その他、自由記述の意見欄には、「顔と名前を一致させるには忙しすぎる」等の時間不足を訴える意見が目立った。その意見を反映させる形で、前述したように今年からは時間が30分延長される形となるが、今年の運営スタッフに話を聞いたところ現状ではこれが精一杯の対応だという。そのため参加者サイドの目線に立てば、短い時間の中で自身をうまく表現する準備をしておくことが重要になるだろう。また中には、男性の少なさを指摘する意見もあった。

4.結論

 図4、図5の結果が示すように、「ゆる婚」は「来てくれれば後悔はさせません!」というイベントであると言えるだろう。そして何より特筆すべきは、このアンケート自体回答者の数では女性の方が16名多いという状況に象徴される、歪な男女比である。参加者の女性に対して「男性が少ない」などと書かせてしまっているような状況は、全ての男性ソフィアンが真に恥ずべきものではないだろうか。もしこの文章を読んでいる方の中に、最近少しでも出会いの少なさを嘆く気持ちを感じた男性がいたとしたら、今すぐに5月26日(日)のスケジュールを確保し、今年の「ゆる婚」に勇躍参戦する準備を始める必要がある。あるいは友人の方にも、ぜひこのイベントの存在を伝えるべきだ。そして女性の方は、まず毎年椅子取りゲームさながらの様相を呈す参加申し込みを抜かりなく行い、当日に向けた準備を進めてほしい。

 ずっと何かを、誰かを、探しているような気がする人にこそ、あと一歩の勇気を持って踏み出した先に、ただひたすらに美しい眺めが待っている。5月26日、すべては四谷で。

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